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自衛隊の統合運用

世界史コンテンツ(のようなもの)番外編


~自衛隊の統合運用~
 










「みなさん、こんにちは~「世界史コンテンツ(のようなもの)」を始めますよ~」





「……」





「……」





「……」
 




「???どうかしましたか~」





「いや……どうしたもこうしたも」





「9ヶ月放置したあげくに「大砲の時代」ではなく、番外編をupするなど無責任が過ぎます」





「もう飽きちゃったのかな。文庫化と漫画原作で食いつないでいる某作家みたいだね」





「何も更新がないよりずっとマシだとは思いませんか?前向きに考えればいいのです!」





「それにしても、いきなり自衛隊ネタはどうかと思うが」





「そもそも世界史ですらないではありませんか!」





「そんなことはありません。日本における自衛隊だって世界の歴史の一部ですよ」 





「詭弁っぽいわね~。それだと『美味しいカレーの作り方』とかいうお題でだって、食文化の歴史とか何でも言えるじゃない」





「カレーですか! いいですね~是非是非今度はそのネタでやりましょう♪」





「シエルにカレーネタを振るとは……」





「ん~、『真月譚月姫』だと学食でカレー食べてなかったけどね」





「それは黒歴史ですから触れぬように。あとテレビ埼玉金曜深夜枠の某アニメにも触れないようお願いいたします」





「そ、それはスタジオディーンの……」





「……」





「いや、何でもない」





「お莫迦なネタは脇に置いて本題に入りましょう。今から1ヶ月と少し前に、自衛隊の組織改編が実施され統合幕僚監部が設置されたのはご存じですか?」





「報道されていたので知ってはいる、という程度ですが」





「一般的な認識としてはそんなものでしょうね。それでは、先ず統合幕僚監部が設置されたことで何が変わったのかという部分から説明しましょう」





「口を挟むようで悪いが、陸海空それぞれの部隊を統合幕僚監部が一元的に運用するようになったというだけのことではないのか?」





「簡単に言ってしまえばその通りなんですけど……。それだけだと何が何やら分からない人も多いと思いますよ」





「統合幕僚監部? 一元的運用?」





「えぇ~とですね、以前は陸海空各自衛隊の、それぞれ各幕僚監部が麾下の部隊を独自に運用してきたのですが、今回の組織改変で陸海空全ての部隊運用の権限が新設された統合幕僚監部へ移ったのです。陸海空の幕僚監部は、運用以外の機能を担うことになります」





「相変わらず分かんないわね~。だいたい運用ってどういう意味?」





「自衛隊用語とでも言えばいいのか分からないが、自衛隊独特の言い回しで、一般的な用語に翻訳するならば『作戦』というような意味だと思う」





「実際に将が兵卒を率いる行動と捉えれば良いのですね」





「解説をありがとうございます。陸海空でバラバラな指揮系統で戦っていたら効率が悪いですよね。ですから最初から指揮系統を一つにまとめてしまおうということなんですよ」





「そうですね。王と言えども諸侯を思うように戦わせることは至難の技です。指揮権を統一できるのならば、それに越したことはない」





「でもさぁ、兵隊さんって日常的に艦艇や飛行機に乗って移動したり、一緒に戦ったりもする訳でしょう? 今まではずっと陸海空がバラバラに戦うことになってたの?」





「いえ、そうではありません。以前は統合幕僚会議という組織がありました。そこで必要に応じて統合部隊の調整を行っていた訳です」





「調整? 戦争なんていつ起こるか分からないのに、陸海空の各部隊をまとめて運用することが必要になるたびに会議を開いて誰がどうするとか決めるっていうの?」





「まぁ、そうなんです。情けない話なんですけども」





「まったく……呆れたものだ」





「平時より適切な取り決めをしておかなければ、急場でそうそう上手く指揮権のような微妙な問題がまとまるとは思いません。『凡庸な一人の指揮官は、 優れた二人の指揮官に優る』という格言のとおり指揮権の統一は極めて重要な問題です」





「まったくそのとおりです。さらに付け加えるならば、先ほどの統合幕僚会議のトップである議長は、制服組の最高位ではあるのですが、実質的な権限はほとんど無いに等しく名誉職的なものでした」





「う~ん……だったら最初から統合運用ってやつを出来るようにしておけば良かったんじゃないの? なんでわざわざ必要に応じて相談するなんて面倒な制度にした訳?」





「それは歴史的経緯がいろいろあったのですよ。そうですね……どこから説明したものでしょうか。え~と、保安隊は分かりますか?」





「自衛隊の前身だな」





「そうです。その保安隊創設時に、実は単一の幕僚監部を創設するという計画があったのですよ」





「計画があったということは、何か理由があって断念したと言うことですか?」





「はい。米海軍も巻き込んで旧海軍関係者が大反対しました。事務当局の頭越しに吉田首相への直訴までやってのけ、結果的に第一・第二幕僚監部というように二本立てになりました」





「なんでかな?」





「ふん、だいたい想像はつく。幕僚監部を統一すれば数に劣る旧海軍の影響力が、陸助どもに喰われてしまうとでも考えたのだろう。良くある話だよ。統合軍のような話が出ると真っ先に反対するのが海軍であるというのは、日本だけの話ではないからな」





「ご明察。そして、その流れは自衛隊創設時にも繰り返されることになります。今度は航空自衛隊も含めて三幕か一幕か? という議論になったのですが、結局のところはご存じのとおり陸海空の三幕体制になりました。この時は一幕体制がかなり強く支持されていたのですが、実際問題としてカラーの違う組織を無理にまとめることが出来なかったようです」





「カナダ軍のように制服に至るまで完全に三軍統合をやって大失敗した例もある。問題なのは幕僚監部の統合ではなく運用の統合なのだから、それは別にかまわないだろう」





「その運用の問題なのですが、当然ながら三幕にするならば、その上に統合幕僚機構を設置すべきであるという意見は出てきます。特にタカ派の改進党は、強くそれを求めていました」





「また誰か反対した訳?」





「ええ、内局……つまり防衛庁防衛局の所謂『背広組』が大反対してきたのですよ」





「理解できません。指揮権の統合に軍組織自体が反対するとは……」





「いや、そうでもない。内局の連中の考えも分からないことはないな。強力な統合幕僚機構が創設されれば、所謂「制服組」の権限が大きくなり、当時の防衛計画策定を担っていた内局の事務分掌を侵す存在に成りかねない。組織の論理からいえば、そのような動きは潰すに限る」





「下劣なっ!国防をなんだと思っているのですか!」





「そうやって身内で権力闘争やってた訳ね。まったく人間ってやつは進歩がないわ」





「反対したのは内局だけではないのですよ。海の人も内局と組んで反対していました。保安隊の時と同じ理由で、統合幕僚機構が強い権限を持てば、数に勝る陸の人たちが統合幕僚機構内での主導権を握ってしまうのではないかと恐れ、内局と組んで潰しにかかった訳です」





「そうして2006年3月26日まで続く素晴らしい統合幕僚会議が出来ました。めでたしめでたし……ははははは」





「当時の内局や旧海軍の屑どもが目の前にいたら、思わず引き金を引いてしまいそうだ。ククク……」





「その時はお供させて頂きます。聖剣の錆にするのも汚らわしい輩ではありますが」





「実は少し続きがあるのですよ、この話には」





「へぇ~まだ終わってなかったんだ。壊れてる人は放置して話を続けて続けて」





「さすがにまともな人も大勢いる訳で、権限のない統合幕僚会議をなんとか意味のあるものにするべく各所に働きかけ、自民党の国防部会に『中央機構改革に関する小委員会』を設置させることができました。ここまで外堀を埋めてしまえば内局といえども抵抗できません。自民党総務会でも全会一致で『防衛二法改正第一案』が通りました」





「それってどういう案なの?」





「これは、とりあえず統合幕僚機構を改革するぞっていう法案で、詳細は後に訓令で定めるというようなものなんですよ。少しでも反対をし難くするために法制化の段階では、具体的な記述を避けた訳です。まさか、これがあのなような結果を生むとは……」





「どういうこと?」





「それを説明する前に、こちらを見てください……

 
 1959年 第31国会 提出見送り
 1960年 第34国会 継続審議
 1960年 第37国会 審議未了
 1961年 第38国会 成立






「これって『防衛二法改正第一案』のことだよね。いろいろあったみたいだけど国会で成立したんだったらいいんじゃない、別に」





「それが……法案を作成した1958年当時の関係者が内局・幕僚監部ともに不在になり訓令化が不可能になってしまったんです」





「なっ……なんだって!」





「そんなことが……」





「あ、戻ってきた」





「それ以降、近年まで統合幕僚機構改革が行われることはありませんでした」





「しかし、関係者不在くらいで、せっかく法制化したものが死文化するなんて……」





「この手の作業は極めて複雑怪奇な官僚機構のルールで行う必要があります。当事者が不在になってしまえば、それを遂行する(できる)ような者はいないでしょう。後任者もそれぞれ多くの職務を抱え込んでいますし、事情を熟知しない者が本来業務の片手間に出来る仕事でもありません」





「まぁ、今現在はちゃんと統合運用ってのが出来るらしいんだから、いいんじゃないの?」





「お気楽なことだ。もし過去に戦争があったとしたら、この制度のせいで防げたはずの被害が出ていたかも知れない。下らない権力闘争が軍事的合理性を歪め国家の生存性を低下させていたのだ。私はそこが許せない!」





「ええ、国を守ることを蔑ろにして私的な利益を享受するような者達が、国防の中枢に存在すること自体が犯罪的です。私の国ならばそのような者達は、自ら切って捨てます!」





「必ずしもそうとは言えませんよ。内局は内局で国のことを考えればこそ、統合幕僚機構の設置や強化に反対した側面もありますから」





「ほう、面白い。聞こうじゃないか。彼らの言い分とやらを」





「端的に表現するならば、武権蔓延を防ぎ旧軍の二の舞を回避する為です。戦後、GHQの占領政策で武装解除されたとは言え、戦前の記憶がまだ色濃く残っていた時代のこと、かつてのような軍人が幅を利かせるような国にしてはならないという思いが強かったのですよ」





「おためごかしに聞こえるな。結局は自分たちが主導権を握りたいというだけの話だろう。シビリアンコントロールを文官統制・文官優位と解釈し、制服組を統制していたのはその現れではないのか?」





「確かにそういう部分もあったでしょう。警察予備隊創設時には、旧内務省の警察官僚が中心となったことから、警察機構における内務官僚の警察統制との近似のような感覚で内局が制服組を統制しようとしたのかもしれません」





「え? やっぱりそうなの?」





「でも、それは一面的な見方ですよ。それぞれの集団がある程度の権力闘争等を行うのは避けられません。どんな社会にだってあることです。自衛隊を過度に信頼せずに米軍に国防の多くを任せるという選択肢は、当時としては現実的なオプションです」





「他国に国防を依存するなど論外です! 自国すら守れぬような民族は、一時はしのげてもやがて滅びる運命ではないですか」





「セイバーに原則同感ではある……が、日米同盟が現実的な選択肢であったことには同意せざるを得ない。しかも、ほぼベストに近い選択肢だったとすら思う」





「中世と現代だと考え方も違って当たり前だわ。中世なんて敵の領土は切り取り御免だけど、現代はそう簡単にはいかないもんね。まぁ、相手にもよるけど」





「例え現代であろうと、国防を他国に依存すれば国民は堕落します。もしも同盟が解消されたらどうなりますか? 一度堕落すれば独力で外敵に立ち向かう気概を取り戻すまで多大な時間と努力が必要になるのです。それまで侵略を受けない保証はありますか!?」





「あの~ちょっと話がずれてますね? 現実問題として吉田ドクトリン(軽武装・経済重視)で戦後日本は上手く立ち回ってきたということで、今回のところは別にいいじゃないですか」





「しかし、それはただの僥倖だっただけかもしれず……」





「二つの超大国に挟まれた状況下で、より日本にとって有利と思われる米国と組んで冷戦を勝ち残ったのだから、それはそれで評価しないといけないだろう。それはそれ、これはこれ、だ」





「それに最近は有事法制も整備されたし、憲法9条改正論議も盛んになってきたし、防衛庁の省昇格も現実味を帯びてきたではないですか!これは冷戦の終結により米国にとって同盟国としての重要性が相対的に低下した日本が、徐々に国防意識に目覚めつつある兆候かもしれませんよ」





「それは……そうかも知れませんが……」





「セイバーさんの誤解(?)も解けたところで、今回の講義は終わりにしましょう」





「なんだか最後がグダグダっぽかったけど、こういうのもたまにはいいわね」





「今回は主に統合運用とその歴史的経緯についてだったが、なかなか面白い話だったよ」





「少々納得がいかない点が残っていますが、理解は出来るよう努力してみます」





「せっかくですから、次回も番外編の続きということで、自衛隊の長期防衛計画策定の歴史的経緯について講義することにしましょうか」





「高価な本を買ったのにネタが余ると勿体ないもんね~♪」





「そのような身も蓋もないことは言わないように」





「別にいいんですけどね。久しぶりに最後まで講義できましたし」





「と言う訳で、それじゃあ、またね~」





※アイコンは眠りの園よりお借りしています。


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